「玄徳、軍師を識る」の巻 ⑤ 解説(右クリックして保存) 前回の続きになります。城から出て来た玄徳さんを曹操さん、「よしチャンスだ!やっちまえ!」と兵士達に命令・・・ということにはもちろんなりません。激突を前に2人の英雄が対峙。緊張感の漂う中、舌戦を繰り広げます。ここでカメラは曹操さん、玄徳さん、趙雲さんの順に映し出します。許褚さんはハブられました。 まずは曹操さん、「劉備、お前など所詮私に飼われた池の中の鯉。徐州を得られたのも私がちょっと油断したからだ」と切り出します。これに対し劉備さん、「お前は漢の宰相の位にあるが、実際は謀反人だ。皇帝陛下の勅命により、お前を必ずシャーする!」と応じます。 In this world, there is no shortage of people who want to kill me. It is a pity that all that's left of them are bones in their graves. You are not my match. Just surrender the city quickly. Then, I will grant you a piece of land to let you continue growing vegetables. 曹操さん、「おとなしく徐州を渡せば野菜栽培に励めるよう、土地を少し譲ってやってもいいぞ」と皮肉ります。これは以前、曹操さんを油断させるため、玄徳さんが農民の真似事をしていたことに対する当てこすりです。これに対し玄徳さん、「我が軍は少数精鋭。どこからでもかかってこんかい」と強気で応じます。 On what grounds are you so sure of yourself? 「その自信はどこから来るのだ?」と尋ねる曹操さんに玄徳さん、「だって袁紹の動きが心配でしょ?許昌を攻められるかもよ?」と答えます。玄徳さん、強気の態度を崩していませんが、これはハッタリです。内心、袁紹が要請に応じて動いてくれるか、気が気でありません。 曹操 Aren't you too generous with your opinion of Yuan Shu? 玄徳 I was too generous with my opinion of you. 「袁紹を買いかぶり過ぎじゃないの?」と曹操さん。それに対し玄徳さん、「私はお前を買いかぶり過ぎていた。お前にも漢王室への忠義の心が少しは残っていると信じていた。まさか身重の皇后様を惨殺したあげく、自分の娘を新皇后に据えるとは・・・。お前は獣以下だ」と噛み付きます。 曹操 Do you really want to fight? 玄徳 Until my last breath. 話し合いは決裂。決戦は避けられません。ここで場面は袁紹陣営に移ります。 玄徳軍の使者としてやってきたのは糜芳(びほう)。 史実でも玄徳さんに早い段階から仕えてきた人物です。ドラマでもちょくちょく顔を出すほか、小太りで愛嬌のある顔をしているため、印象に残り易いキャラクターです。豪傑でもなく、特に戦功を挙げたわけではないため、「英雄」の1人としては数えられていないようです。ドラマでは敵の包囲をかいくぐって援軍を求めるという危険な任務を与えられているため、玄徳さんに一定の信頼を置かれているのが分かります。史実ではずっと後に孫権の呉に寝返り、それが関羽の最後に繋がったことも手伝い、三国志ファンの評価は低いものと思われます。 糜芳さん、玄徳さんの言いつけ通り、まずは許攸の元へ親書を届けにいきます。「玄徳様があなたを稀代の軍師と称えていました」と持ち上げられ、「よっしゃ。許昌を攻めるよう、俺が袁紹閣下を説得したる!」と上機嫌になります。実を言うと許攸さん、ずっと許昌を叩く機会を伺っていました。玄徳軍との共闘はまさに「渡りに舟」なわけです。早速、主の元に向かう許攸さんですが、思わぬアクシデントが発生します。 三男の袁尚(えんしょう)の病気です。悲嘆にくれる袁紹さん、自ら息子の介護をします。 My son suddenly fell ill. His life is now hanging on the line. What should I do? 狼狽し、とても人の話を聞けるような状態にはない袁紹さんですが、許攸さんも必死で訴えかけます。 My lord, our chance for victory has arrived. Cao Cao had personally led 200,000 troops to attack Xuzhou now. As the result, Xuchang must be empty now. 「曹操の留守中に許昌を奪えば曹操軍は拠点を失い瓦解します。加えて献帝陛下を保護できれば、それを後ろ盾に好き放題できるのです。そうなれば閣下の天下統一も時間の問題ですよ!」 ショボンとなっている袁紹さんをあまり刺激しないよう、腫れ物を触るかのように慎重に説得を試みますが・・・。 許攸 It is only a matter of time that you conquer the world. 袁紹 How far is Xuchang from here? 「ここから許昌までどのくらいの距離だ?」と尋ねる袁紹さんに「それを忘れるとかあり得んでしょう?!」と許攸さん。「ダメだ。息子を一歩も動かせない」と駄々をこねる袁紹さん。この千載一遇のチャンスを失うわけにはいきません。許攸さん、ほとんど泣き顔で訴えます。 袁紹 My son is the apple of my eye. If anything happens to him, I will not want to live anymore. 許攸 My lord, the war manuals say once an opportunity is lost, it will not return. This is the only chance to defeat Cao Cao. Time does not wait. I beg you to send the army immediately. しかしながら「今の私は頭も心もグチャグチャだ。こんな状態で戦いなどできるか?!」と袁紹さん。 遂にキレた許攸さん、「閣下、目をお覚ましください!」と声を上げますが、「うるさい。出てけ!」と退室を命じられます。ちなみにこの「息子の病気で兵を動かさなかった」というエピソード、なんと史実らしいです。国の行く末を決定づけるかもしれない戦いよりも自分の息子を優先する。父親としては立派かもしれませんが、一国の主としては失格です。この辺が歴史家の袁紹さんに対する評価を下げている一因なのでしょう。 外で待機していた糜芳さん。いち早く玄徳さんに吉報を届けたいところですが、袁紹が兵を動かさないことを許攸さんから聞かされ、落胆というよりも「マジか?」という表情。 すっかり呆れ果てた許攸さん。「子供のために天下取りの好機を無駄にするとは、こんな暗君は聞いたことがない!馬鹿!阿呆!間抜け!」と大声で(袁紹に聞こえるように)叫びます。激怒した袁紹さん、兵士達に命じて20叩きの刑に処します。 間近で目撃していた糜芳さん(写真後ろ)、「こんなヤヴァい所にはいつまでもいられねえ」とそそくさと立ち去ります。」 ここで場面は玄徳軍と曹操軍の戦いに戻ります。糜芳が戻るまで必死で防戦する玄徳軍。城壁の外に散乱する兵士達の死体が激戦の凄まじさを物語ります。徐州は堅固な要塞。たとえ曹操軍でも簡単には落とせません。それでもこのままでは陥落は時間の問題です。 糜芳はまだ戻らないのか?と落ち着かない様子の玄徳さん。部屋の中をうろちょろしています。その奥には酒瓶の前に腰かけている張飛さん。 そこへ遂に糜芳が帰還します。 長旅でヘロヘロの糜芳さん。両脇を兵士達に抱えられて入ってきます。曹操軍の包囲を見事突破しての帰還ですので、玄徳さんも「良く戻った!」というよりは「良く戻れたな?!」という様子です。しかしながら、玄徳さんが聞かされたのは「袁紹動かず」の知らせでした。 糜芳 His son is ill. He is distraught and not in the mood for the battle. 玄徳 But this is a matter of life and death. As a commander, how could he pass over the chance just because his son is ill? 「国の命運を左右する好機を子供のために見逃すってか?」と耳を疑う玄徳さんに、「実際あの場にいなかったら信じられないっすよー」と糜芳さん。頼りの許攸の説得も無駄に終わったことを聞かされ、玄徳さんは唖然。張飛さんに至っては「あんな臆病者よりも、女が司令官になる方がマシだ!」と激怒します。 これは由々しき事態です。「袁紹なんぞに頼らず、我々だけでやろうぜ、兄者!」と息巻く張飛さんですが、圧倒的兵力と物量に勝る曹操軍相手にまともにぶつかっては勝ち目はありません。その時、玄徳さん、ある事に気付きます。徐州城は曹操の大軍に包囲されていたはずです。それでも糜芳は戻ってきました。 Cao Cao surrounded Xuzhou seamlessly. How did you manage to enter the city? 「どうやって包囲を突破した?」と尋ねる玄徳さんに糜芳さん、「自分も帰還できるとは思ってなかったが、曹操軍が包囲を解き、本陣の位置を下げていた」と伝えます。これを聞いて玄徳さん、「攻略に手を焼いたので、次の攻勢をかける前に休息をとっているに違いない」と推測します。袁紹に頼れぬ今、チャンスはここしかありません。張飛も「奇襲をかけようぜ!」とやる気満々です。玄徳さんもこれに同意します。 This seems to be the only way. We can't bank on Yuan Shao anymore. We can only depend on ourselves. If we wait for Cao Cao to rest his troops completely, we'll have even less hope. Only by launching a sneak attack at night, can we hope for victory. 玄徳さん、夜襲をかける覚悟を決めました。失敗すれば全てを失います。果たして玄徳軍の奇襲は成功するのか?!・・・と言っている間に失敗フラグが立ちまくってますw 場面は夜の曹操軍の陣営に移ります。 曹操さん、自室のソファ?に寝っ転がって寛いでいます。 そこへお馴染みの曹仁さん登場。 曹操さんに「何故軍を下げて包囲を解いたのです?多数の死傷者が出て弱気になったのですか?」と疑問をぶつけてきます。ちなみに曹仁さんが疑問を投げかけ、曹操さんがそれに答えるという場面は沢山出てきます。この演出は視聴者に状況を理解させるための工夫なのですが、どうしても「曹仁は知恵の回らない男」という印象が作られてしまい、少し気の毒な気もします。 これに対し、曹操さん、恐るべき告白をします。「玄徳軍に良く見えるよう、我が軍の兵士達の遺体を意図的に放置してきた。しかも死んだ兵達は主力ですらなかった」と。こうすることによって曹操軍が(長旅も手伝い)疲弊していると勘違いさせ、玄徳さんを城の中からおびき出そうという算段です。なんと全ては曹操さんの目論見通り。玄徳さんは彼の手の平で踊らされているのです。「夜襲に備え、防備を倍増させろ!」と曹仁さんに命令します。 その晩、これが曹操さんの罠とは露知らず、夜襲をしかけに曹操陣営の前に現れた玄徳軍。(\(^o^)/オワタ) 果たして玄徳さんの運命は?今回はこれまで。 参照 : Episode22 |